見出し2
キッコの村の学校にはたまりがありませんでしたから雨がふるとみんなは教室で遊びました。ですから教室はあの水車小屋みたいな古臭い寒天のような教室でした。みんなは胆取りと巡査にわかれてあばれています。
見出し3
「遁げだ、遁げだ、押えろ押えろ。」「わぁい、指噛じるこなしだでぁ。」
がやがやがたがた。
見出し4
ところがキッコは席も一番前のはじで胆取りにしてはあんまり小さく巡査にも弱かったものですからその中にはいりませんでした。机に座って下を向いて唇を噛んでにかにか笑いながらしきりに何か書いているようでした。
見出し5
キッコの手は霜やけで赤くふくれていました。五月になってもまだなおらなかったのです。右手のほうのせなかにはあんまり泣いて潰れてしまった馬の目玉のような赤い円いかたがついていました。
見出し6
キッコは一寸ばかりの鉛筆を一生けん命にぎってひとりでにかにかわらいながら8の字を横にたくさん書いていたのです。(めがね、めがね、めがねの横めがね、めがねパン、くさりのめがね、)ところがみんなはずいぶんひどくはねあるきました。
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