ホリゾンタルとバーティカルのSaaSはどう違うのか?特徴と選び方を詳しく解説

インターネットやDXの進展により、ビジネスでSaaS(サース)を導入する企業が増えています。SaaSの中でも「ホリゾンタル」と「バーティカル」という分類があり、それぞれ特徴やメリットが異なります。自社の業種や目的に合ったサービスを選ぶには、これらの違いを押さえることが重要です。この記事では、ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いや特徴、選び方まで分かりやすく解説します。

目次

ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いとそれぞれの特徴を解説

ホリゾンタル バーティカル

SaaSは業務効率化やコスト削減を目的に多くの企業で導入されていますが、ホリゾンタルとバーティカルの2種類が存在します。それぞれの特徴や違いを整理しましょう。

SaaSとはどのようなサービスを指すのか

SaaSは「Software as a Service」の略で、インターネット経由でソフトウェアを利用する形態を指します。従来のパッケージソフトと異なり、インストールや自社サーバーの管理が不要です。

SaaSの主な特徴は、月額や年額で利用でき、自動アップデートやサポートを受けやすい点です。たとえば、メール配信、会計、営業支援など幅広い分野で活用されています。また、クラウド上で動作するため、場所や端末を選ばず利用できるのも大きな利点と言えるでしょう。

ホリゾンタルSaaSの基本的な意味

ホリゾンタルSaaSとは、特定の業種や業界に限定せず、幅広い企業や組織で利用できるサービスを指します。主に業務全体で共通する課題やプロセスをサポートする機能が中心です。

たとえば、オンラインストレージやチャットツール、勤怠管理システムなどがこれに該当します。どの業界でも使いやすいように設計されており、導入のしやすさや市場の広さが特徴です。一方で、特定業種の細かな要望には対応しにくい場合もあるため、導入時は自社のニーズを明確にすることが大切です。

バーティカルSaaSの基本的な意味

バーティカルSaaSは、特定の業界や業種向けに最適化されたサービスを意味します。たとえば、医療、建設、運送、飲食など、それぞれの業界特有の業務を支援する機能に特化しています。

この種のSaaSは、業界ごとに異なる法律や商習慣、業務フローなどへ細かく対応できる点が強みです。とくに専門性の高い業界では、一般的なSaaSより大きな効果を発揮できます。しかし、対象となる市場が限定的なため、導入対象も限られやすい傾向があります。

ホリゾンタルとバーティカルの分類が注目される背景

近年、DXの推進やビジネス環境の高度化により、企業ごとに異なる課題への対応が求められています。その中で、汎用性の高いホリゾンタルSaaSと、業界特化型のバーティカルSaaSのどちらが適しているかが注目されています。

企業によっては、幅広い業種で使えるサービスよりも、自社業界の課題に深く対応したサービスを求めている場合も多いです。こうした背景から、サービスの選び方や導入戦略を検討する上で、2つの分類を理解しておくことが重視されています。

ホリゾンタルSaaSのメリットとデメリット

ホリゾンタル バーティカル

ここでは、ホリゾンタルSaaSの代表的なメリットとデメリットを取り上げます。汎用的なサービスならではの利点と、導入時に注意すべき点を整理します。

幅広い業種への導入がしやすい利点

ホリゾンタルSaaSは基本的に業種や業界を問わず幅広く導入できる点が大きな特徴です。たとえば、以下のようなサービスが多くの企業で利用されています。

  • オンラインストレージ(例:Google Drive、Dropbox)
  • 社内チャットツール(例:Slack、Chatwork)
  • 勤怠管理システム(例:freee人事労務)

このような共通ニーズに応えるサービスは、従業員数や業界規模を問わず多くの企業が活用しやすいです。導入にかかる手間やコストも分かりやすく、初めてクラウドサービスを利用する企業にも選ばれています。

大規模な市場と高い成長性

ホリゾンタルSaaSは、多種多様な業界・業種で利用されるため、非常に広い市場が期待できます。多くのユーザーを対象にサービスを提供しやすく、利用者が増えればサービスの拡張や新機能の開発にも投資しやすくなります。

また、市場の成長性も高く、大手企業だけでなく中小企業や個人事業主まで幅広い層が利用の対象です。このため、SaaS事業者もスケールメリットを活かしやすく、継続的なアップデートやサポート体制の充実が図られる傾向にあります。

競合が多く差別化が難しい課題

ホリゾンタルSaaSの市場は参入障壁が比較的低いため、多くの企業が同種のサービスを展開しています。結果として、機能や価格での差別化が難しくなりがちです。

利用者側にとっては選択肢が多い一方で、どのサービスが自社に最適かを見極めるのが難しく感じられる場合もあります。また、競合が多いため、サービス提供者は継続的な機能改善やサポート品質の向上が求められます。

汎用的な機能で個別ニーズに応えにくい点

ホリゾンタルSaaSは多様な企業に使いやすいよう汎用的な機能が中心です。そのため、業界特有の細かい要望やカスタマイズへの対応は得意ではありません。

たとえば、独自の業務フローや専門的な帳票作成が必要な場合、標準機能だけでは対応が難しいこともあります。こうした場合は、追加の開発や他システムとの連携を検討する必要が生じます。

バーティカルSaaSのメリットとデメリット

ホリゾンタル バーティカル

バーティカルSaaSは特定業界に特化したサービスですが、その特徴にはメリットだけでなくデメリットも存在します。ここで主なポイントを紹介します。

特定業界の課題解決に強みを持つメリット

バーティカルSaaSは、業界独自の課題や業務フローに合わせて設計されているため、一般的なSaaSではカバーしきれない細かなニーズに対応できます。たとえば、医療業界向けの電子カルテシステムや、建設業界の工程管理ツールなどが挙げられます。

このように、業界ごとに異なる法律や商習慣、専門的な処理を反映した機能が実装されていることで、現場での使い勝手や業務効率が高まります。結果として、ユーザーの満足度や定着率も高くなりやすいです。

競合が少なく独自ポジションを築きやすい

バーティカルSaaSは対象となる市場が限定的であるため、競合するサービスもホリゾンタルSaaSほど多くありません。その分、特定業界の中で独自のポジションを築きやすいという利点があります。

また、顧客のニーズをダイレクトに反映しやすく、フィードバックをもとにした機能改善やサポート体制の強化が進めやすいです。業界特化型であることが、リーダー企業としての地位確立につながるケースも少なくありません。

市場規模が限られるデメリット

バーティカルSaaSは特定の業界や業種に絞って開発されているため、市場全体の規模が限定されます。たとえば、医療や建設など一部の業界でしか利用されない場合、サービスの拡大や売上の増加に一定の限界が生じやすいです。

また、導入先企業が限られていることで、投資回収のスピードや事業成長のペースに影響を及ぼす可能性があります。新たな業界開拓を行う場合は、機能の大幅な見直しや追加開発が必要になることもあります。

導入のハードルが高くなる場合がある

バーティカルSaaSは業界特有のルールや要件を反映している分、導入時のカスタマイズや運用フローの見直しが必要になるケースがあります。そのため、導入にかかる期間やコストが一般的なSaaSより高くなることも珍しくありません。

また、現場での業務習慣が根強い場合、新システムへの移行やスタッフの教育に時間がかかることも考えられます。サービス選定の際は、事前に業務フローや運用体制を確認し、導入支援の充実度などもチェックしておくと良いでしょう。

ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの代表的なサービス事例

ホリゾンタル バーティカル

ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いを具体的に知るため、実際のサービス事例をいくつか紹介します。導入を検討する際の参考にしてください。

ホリゾンタルSaaSの有名サービス例

ホリゾンタルSaaSには多様な業界で利用される代表的なサービスが数多くあります。下表はその一部です。

サービス名主な用途特徴
Google Workspaceオフィス業務全般ドキュメント・メール一括管理
Slack社内コミュニケーションチャット・ファイル共有
Dropboxデータ保存・共有大容量ストレージ

これらは業種や規模を問わず導入しやすく、社内の情報共有や業務効率化に役立っています。

バーティカルSaaSの注目サービス例

バーティカルSaaSは業界特化型であるため、導入事例も専門性の高いものが多く見られます。たとえば以下のサービスが注目されています。

  • メディカル:電子カルテシステム「CLINICS」
  • 建設業:工事進捗管理「ANDPAD」
  • 飲食業:予約・顧客管理「トレタ」

これらは、それぞれの業界の課題や業務フローに合わせて設計されており、現場での使い勝手や業務効率向上に貢献しています。

海外における主要なSaaS事例

海外ではSaaSの導入が進んでおり、多くの有名サービスが誕生しています。

サービス名分類主な対象・用途
Salesforceホリゾンタル営業支援・顧客管理
Veeva Systemsバーティカル製薬・ライフサイエンス
ShopifyホリゾンタルECサイト構築

特にSalesforceやShopifyは幅広い業種で活用されており、Veeva Systemsは製薬業界特化型として成長を続けています。

日本国内での成功事例

日本国内でも多様なSaaSサービスが生まれています。

  • freee(ホリゾンタル):会計・人事・労務クラウド
  • Money Forward(ホリゾンタル):経理・請求書管理
  • ANDPAD(バーティカル):建設業向けプロジェクト管理
  • トレタ(バーティカル):飲食業向け予約管理

これらのサービスは、使いやすさや業界特化の機能により、多くの企業で成功事例として取り上げられています。

ビジネスにおけるホリゾンタルとバーティカルSaaSの選び方

自社に最適なSaaSを選ぶには、業種や業務内容、現場の要望など複数の視点から検討することが大切です。ここでは選び方のポイントを整理します。

自社に合うSaaSを見極めるポイント

SaaS選定時には、以下のような観点が重要です。

  • 自社の業務課題が業界共通か、独自のものか
  • 必要な機能が標準で揃っているか
  • カスタマイズや連携のしやすさ
  • サポートや導入支援の充実度

これらを踏まえ、自社の現場でスムーズに運用できるサービスを選ぶことが、導入効果を高めるポイントになります。

業種や業態ごとに適した選択肢

業種や業態によって適したSaaSは異なります。たとえば、以下のような選択が考えられます。

業種推奨されるSaaS分類理由
小売・サービスホリゾンタル汎用機能が中心で使いやすい
医療・建設バーティカル専門的な業務に特化
IT・広告ホリゾンタル多様な業務管理に対応

自社の業種や業務内容を考慮し、必要な機能が備わったサービスを検討すると良いでしょう。

導入前に確認すべき注意点

SaaS導入前には以下の点を確認しておくことが重要です。

  • 現場の業務フローとサービスの適合性
  • システム移行や運用開始までのスケジュール
  • セキュリティやデータ管理の体制
  • 継続的なサポートやアップデートの有無

また、事前に無料トライアルやデモを活用し、実際の使い勝手を確認することもおすすめです。

今後のSaaS市場動向とキャリアへの影響

SaaS市場は今後も拡大が見込まれ、各業界で新しいサービスが登場しています。特にバーティカルSaaSのような領域特化型サービスは、業界ごとの課題解決に貢献し、専門スキルを持つ人材の需要も高まるでしょう。

ビジネスパーソンにとっては、SaaSの活用スキルや業界知識を磨くことで、キャリアの選択肢が広がります。今後はSaaSの進化や新しい活用事例に注目し、柔軟に取り入れる姿勢が求められます。

まとめ:ホリゾンタルSaaSとバーティカルSaaSの違いを理解し最適な選択を

ホリゾンタルSaaSは幅広い業種で使える汎用性、バーティカルSaaSは業界特化の課題解決力が特徴です。それぞれのメリットとデメリットを踏まえ、自社の業務や目的に合ったサービス選定が重要となります。

導入前には、自社の課題や業務フロー、将来的な拡張性までを総合的に検討しましょう。適切なSaaSを選ぶことで、業務効率化や競争力の向上につなげることができます。今後の市場動向も注視しながら、最適なサービス選択を目指してください。

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この記事を書いた人

岩永 圭一のアバター 岩永 圭一 アルル制作所 代表取締役

2003年にECサイト「ウェディングアイテム」を立ち上げ、手作り結婚式を応援。年商3億円達成。2005年デザイン会社を設立。2社を譲渡後、2021年にアルル制作所を立ち上げ、オウンドメディア運営代行『記事スナイパー』を開始。これまで立ち上げた事業は、他にも中古ドメイン販売・キーワードツール・バー専門ホームページ制作・記事LP制作・レンタルスペース・撮影スタジオと多岐にわたる。

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