コトラーのマーケティング理論とは?1.0〜4.0の違いを学ぶ

コトラーのマーケティング理論とは

アメリカの経営学者、フィリップ・コトラーが提唱する、マーケティングに関する様々な理論です。

コトラーは、現代マーケティングの第一人者で、“マーケティングの父”とも呼ばれています。

マーケティング担当者にとって、コトラーのマーケティング理論を学ぶことは必要不可欠で、知っておかないとマーケターを名乗れない、と言っても過言ではありません。

この記事では、コトラーのマーケティング理論である、マーケティング1.0~4.0の概要を紹介し、企業事例を交えながら、最新のマーケティング4.0について、詳しく解説します。

目次

コトラーのマーケティング1.0~4.0までの歴史

コトラーのマーケティング理論は、大きく分けて1.0〜4.0まであり、時代の流れに合わせて、アップデートされてきました。

マーケティング1.0 製品主義

製品主義

マーケティング1.0は、1900年代から1960年代にかけて育まれた、“製品”に焦点を当てるマーケティング戦略のことを表します。

当時は、モノの種類自体が少なく、顧客側に選択肢があまりなかったため、「良いものを大量に作り、それを伝えるだけで売れる」という仕組みが、成立していました。

そのため、マーケティングにおいても、4P(Product、Price、Place、Promotion)などを用いて、企業側の目線で戦略が立てられていたのが一般的です。

現在のように、ターゲットを絞ることはなく、不特定多数の顧客に向けて、商品の強みやベネフィットを伝えるマーケティングが行われていました。

マーケティング2.0 消費者志向

消費者志向(マーケティング2.0)

マーケティング2.0は、“消費者”に焦点を当てたマーケティング戦略です。

1970年代頃になると、技術発展が進み、モノの種類が著しく増えました。

市場での競争は激しくなり、マーケティング1.0のように、「作って売るだけ」という考え方は通用しなくなったのです。

マーケティング戦略においても、「顧客が何を求めているか」といった、顧客のニーズを汲み取ることが重要になりました。

マーケティング2.0の考え方は、市場を区切ってターゲットを決め、自社のポジションを確立する、STP分析のようなマーケティングのフレームワークが生まれた背景にもなっています。

マーケティング3.0 価値主導

価値主導(マーケティング3.0)

マーケティング3.0は、商品・サービスに付随する“価値”を重視したマーケティング戦略です。

1990年代になると、インターネットの普及により、消費者側が得られる情報に大きな変化がありました。

企業が一方的に発信する情報を受け取るしかなかった消費者が、消費者対企業、または、消費者同士といった、双方向のコミュニケーションを取ることが可能になったのです。

その結果、消費者は商品・サービスを購入する際、「社会をより良くできるのか」「社会貢献につなげられるのか」といった、社会的価値を求めるようになりました

マーケティング4.0 自己実現

自己実現(マーケティング4.0)

マーケティング4.0は、“自己実現”を達成させるマーケティング戦略です。

マズローの「欲求5段階説」をベースに考えられた概念で、自己実現欲求は人間の最上位の欲求、だと考えられています。

コトラーは、現代のマーケティングでは、すでに自己実現欲求以外の欲求は満たされていると考え、これからは自己実現欲求を満たすマーケティングを行うことが重要、だと説明しています。

製品やサービスによって、顧客がなりたい自分や、あるべき姿になることを目的として、マーケティング戦略を立てるのが、マーケティング4.0の考え方です。

コトラーのマーケティング4.0では5Aが重要

マーケティング4.0のカスタマージャーニー5A

マーケティング戦略には、顧客が製品・サービスを購入するまでの流れを理解するために、カスタマージャーニーという考え方があります。

コトラーは、マーケティング4.0におけるカスタマージャーニーとして、5A理論を提唱しています。

  • Aware:認知
  • Appeal:訴求
  • Ask:調査
  • Act:行動
  • Advocate:推奨

Aware:認知

まずは、商品やサービスの存在を知るところがスタートです。

顧客自身の過去の体験や、周囲の人とのコミュニケーション、企業によるマーケティングなど、何らかの接点から、そのブランドを“認知(Aware)”します。

Appeal:訴求

認知するブランドは、決して1つだけではありません。

そのため、顧客は、それまで認知したたくさんのブランドの中から、自分にとって好ましいものに、興味を示します

この段階が、“訴求(Appeal)”です。

Ask:調査

少数のブランドに興味を持った顧客は、それぞれを“調査(Ask)”します。

詳しい情報を手に入れるために、友人や家族による口コミ、インターネット上のレビュー、または販売員のセールストークなどを参考にして、そのブランドを購入するかを検討するのです。

Act:行動

調査して、自分に合うと確信できたものは、実際に購入する・申し込むなどの、“行動(Act)”に移ります。

購入・申し込みは実際の店舗だけでなく、オンライン上でも行われます。

Advocate:推奨

購入・申し込みまで至った顧客が、次に行うことは、SNSやレビューサイトなどを使った他者への“推奨(Advocate)”です。

第三者の声によるマーケティング効果は高く、マーケティング4.0の5Aの中で、Advocateは最も大切な要素だと考えられています。

マーケティング4.0のポイントは、“顧客に推奨者になってもらう”ことです。
カスタマージャーニーには、これまでも「AIDA」や「AIDMA」といった考え方がありましたが、いずれも“行動”が最後の要素となっていました。
しかし、IT技術の進化、SNSの発達などによって、顧客による宣伝やPRも、マーケティングの一環として捉えられるようになりました。
現代のマーケティングは、推奨までつなげることを意識して、戦略を立てることが求められるのです。

マーケティング4.0はオンラインとオフラインの融合

コトラーは、自身の著書の中で、「マーケティング4.0は、企業と顧客のオンライン交流と、オフライン交流を一体化させる、マーケティング・アプローチである」と、定義づけています。

オンライン交流とは、SNSなどによる“デジタルマーケティング”のことを指し、顧客の行動と推奨を促す役割を担います。

一方、オフライン交流とは、テレビCMなどのような、認知や訴求を促す“伝統的マーケティング”のことを指します。

オフライン交流は、企業と顧客の接点づくりに、オンライン交流は、その関係性をさらに深めるときに効果を発揮します。

オンラインとオフラインを融合させて、マーケティングの最終目標である“顧客の推奨”を勝ち取りにいくことが、マーケティング4.0の考え方です。

マーケティング4.0の企業事例 ネスレ

大手コーヒーメーカーであるネスレの、“ネスカフェアンバサダー制度”をご存じでしょうか。

アンバサダー(ambassador)とは

翻訳すると、「大使」「代理人」「代表者」の意味で、何かの普及活動を行う人のことを指します。ネスカフェアンバサダーとは、直訳すると、ネスカフェ大使となります。

ネスカフェアンバサダーは、企業などに無償でコーヒーマシンを設置し、コーヒーカプセルを販売する仕組みです。

顧客は手軽に美味しいコーヒーが飲めるようになり、かつ、ネスレが認知される環境が作り出されました。

ネスカフェアンバサダーのキャッチコピー「あなたの職場に笑顔とくつろぎの場所を」のとおり、コーヒーマシンが設置されたことで、多くの会社で社員同士のコミュニケーションが活発になったのです。

社内での取りまとめ役を担うアンバサダー目線で考えると、自身のコーヒーを飲みたい欲求が満たされるだけでなく、職場の仲間が喜び、感謝されることで、「自分は周りを喜ばせられる人間だ」、という自己実現にもつながっています

認知から推奨、その先にある自己実現も達成している、ネスカフェアンバサダー制度は、コトラーも「マーケティング4.0を体現している」と評価した企業事例なのです。

コトラーのマーケティング理論のまとめ

コトラーのマーケティング理論は1.0から4.0まであり、時代の流れに合わせて、アップグレードされてきました。

最新の4.0では、オンラインとオフラインを融合するマーケティング戦略が提唱され、顧客の自己実現を促し、自社の商品・サービスを“推奨”してもらうことが、ゴールだと設定されています。

今回の記事を参考にしていただき、顧客の自己実現を達成させ、会社の商品・サービスを推奨してもらうためには、どのような戦略を立てれば良いのか、あなたも考えてみましょう。

ポストしてくれるとうれしいです

この記事を書いた人

岩永 圭一のアバター 岩永 圭一 アルル制作所 代表取締役

2003年にECサイト「ウェディングアイテム」を立ち上げ、手作り結婚式を応援。年商3億円達成。2005年デザイン会社を設立。2社を譲渡後、2021年にアルル制作所を立ち上げ、オウンドメディア運営代行『記事スナイパー』を開始。これまで立ち上げた事業は、他にも中古ドメイン販売・キーワードツール・バー専門ホームページ制作・記事LP制作・レンタルスペース・撮影スタジオと多岐にわたる。

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